2012年1月14日土曜日

地宝論 地球を救う地域の知恵【12年002冊目】


地宝論 地球を救う地域の知恵

<本の紹介>
・チェルノブイリ原発事故の後、キログラムあたり370ベクレルという輸入食品の放射能汚染基準に、シイタケがよく引っ掛かっていたことを思い出しました。調べてみると、放射能をよく集めてくれる作物がありました。「NPOチェルノブイリ救援・中部」がチェルノブイリ現地でナタネを育てていたのです。ナタネやヒマワリは効率よく土地の放射能を集めてくれるのです。種から油を絞ってバイオディーゼル燃料に使い、バイオガスにして煮炊きに使い、その後の搾りかすだけを放射能物質として管理保管していました。
この仕組みを進めれば、土壌はいずれ回復していくことができます。僕はこれを進めるべきだと思うのです。
・問題のあることはわかっています。でも汚染された土壌に自ら残って、命がけで浄化しようとする人を禁止すべきでしょうか。立証データがなければしてはいけないでしょうか。問題があるからあきらめるべきでしょうか。違いますよね、解決しながら進めるべきなのです。社会を変えるのは学者や評論家ではありません。小さな市民のたった一歩の活動だと思うのです。
・「農薬なしに農業はできない」とよく言われますが、日本で本格的に農薬が使われ出したのは戦後10年ほど経ってからでした。それまでは農薬がないのに作物は今よりずっと多く作られていました。
「日本は国土が狭くて自給できない」とも言われますが、1960年時点ではカロリーベースで8割、穀物や主食用穀物は9割自給されていました。
「国産だったらスギ・ヒノキで家を建てるのが当たり前」と人々は思っていますが、戦後の拡大造林までは、一部の地域を除いてスギ・ヒノキは植えられていませんでした。しかも育つのに50年、100年かかりますから、建築材として使えるようになったのはごく最近のことなのです。
・国境線を越える燃料には税金がかからないんです。燃料はコストの中で大きな比重を占めますから、日本国内で作ったものを燃料代と税金を払って運ぶより、人件費の安い中国で作らせて、税金のかからない燃料で東京に運んだ方が安くなってしまうんです。その結果、中国で作られたものを輸入した方が儲かる仕組みになってしまいました。
もし飛行機の国際航路に国内と同じように税金をかけてしまったら、その日のうちに経済のグローバリゼーションはなくなってしまいます。今の経済学者は経済のグローバリゼーションは合理的だと言いますが、これは税金が作ったトリックなんです。
・私たちが地球温暖化の防止をしようと思ったときに一番簡単で効果的な方法は、普段、車に乗らないこと。往復8キロの道のりであれば、1800グラムの二酸化炭素が削減できます。しかし、もっと減るものがあります。たとえばブルーベリーです。ブルーベリーは国内でも収穫できますが、現在、そのほとんどがアメリカからの輸入です。しかも空輸されてきます。たった200グラムのブルーベリーを国内産に替えるだけで、2800グラムの二酸化炭素が減るんです。
たくさんの飛行機が国境線を越えて二酸化炭素を出す。この分は京都議定書の規制を受けていないんです。あくまでも京都議定書のCO2の排出規制は、それぞれの国ごとの約束です。国と国の間を飛び回るCO2はどこの国にも貴族しないので、規制されないのです。そのために現在もどんどん増えています。でも、これを止めないと何の解決にもなりません。そのための「国際炭素税」が考えられていますが、それが実現するまでは野放しなんです。
・小麦やトウモロコシといった同じ種類の作物を大量に作っている大規模農家と、いろんな種類の作物を作っている日本の小規模農家を比べた数字にはおかしなところがあります。いろんな作物のトータル収穫量と、大規模農家の単一作物の収穫量を比べると、小規模農家の方が作物全体の年間収穫量では5倍大きいんです。よく言われている話とは逆です。だから大規模化するのは収穫の効率性、つまり、売りやすさの問題でしかなくて、単位面積当たりの生産性では小規模農家を増やすべきなんです。貧しい国の食糧問題の解決策はよく言われる大規模化ではありません。逆に大規模プランテーションをなくして、小規模農家を増やしたほうが、食べられる人の数は5倍も拡大するんですよ。
・そもそも、アメリカの大量の穀物はどこからやってくるのでしょうか。サハラ砂漠をセンターピボットという巨大な水撒き機で、半径2キロにぐるっと水を捲いて生産をしているから、畑の形が丸いです。アメリカの中部、西部に広がる農地も同じです。こうした場所で、トウモロコシや小麦などを育てています。この捲かれている水は、オガララ帯水層という地下に数千年かけて溜まった化石状の水たまり=化石水です。ここからどんどん吸い上げて使っているので、2020年には枯れると言われています。そんなところに食品の生産を任せておいて、日本は自動車を輸出していればいいなんて、まったく冗談じゃないです。
・現在、農家の平均的な取り分は、スーパーな店舗で売っている価格のわずか12.5%です。スーパーで200円で売っている作物(農家の取り分は25円)を、私に100円で売ったとしても、農家の収入は4倍増えることになります。
こんなこともできます。例えばお米であれば、私は円が暴落してインフレになって食べ物が手に入らなくて飢えるような状況になったとしても食べていけるように、今後20年分確保したい。1年間に1人当たり1俵(60kg)のお米を食べると言われていますが、1俵のお米を作っても、今の買取価格はわずか1万3000円です。これでは農家はやっていけない。農家から3倍の値段で売ってもらうとしましょう。そうすると1年分で3万9000円、10年で39万円、20年で78万円になります。玄米ならほぼ完全栄養の食品ですから、あとリジンを含む豆類と少しのビタミンCを補えば、飢え死にする心配はなくなります。私は78万円出すことで、20年間生きていける保障が得られるわけです。
・ネオニコチノイド(農薬)はフランスやドイツですでに禁止されています。しかし日本ではまだたっぷり使われています。それどころか、単位面積当たりで最も大量に使っているのが日本なのです。しかも食品に認められる残留基準も極めて甘い。ものによってはヨーロッパの500倍の甘さです。1年は365日ですから、日本の基準では、1日でヨーロッパの人たちの1年半分の農薬を摂取することができてしまうのです。
・アセタミプリドは「キャベツに薬液散布後、200ppmで散布21日後まで、100ppmでも散布14日後まで90%の殺虫効果を示し、キャベツ苗の根部を希釈液に浸しただけでも低濃度で殺虫活性を示した」と書かれています。低濃度のアセタミプリドでも、2,3週間残っていたということです。しかもキャベツへの使用時期は、出荷7日前までとなっています。家にあるキャベツも、まだ殺虫効果を持ったままだということになります。私たちの脳が虫と同じアセチルコリン受容体を持っているのに、殺虫効果を持ったままのキャベツを摂取することになるのです。しかもまずいことにこのアセタミプリドはネオニコチノイドの中でも例外的に、脳に蓄積するのです。
・「農薬を使うなというのは人権侵害に等しい」と言われました。たとえば除草など、大変な手間になるので人々を苦しめるだけだというのです。しかし、現実にドイツでもフランスでも実現しています。農の技術・知恵・歴史ともに格段に優れているはずの日本に、なぜできないのでしょうか。吉田さんは自分の「お腹の畑を耕そう」と、野菜の芯や根菜類の皮などの”成長点”を食べようと提案しています。そして現実に、吉田さんのアドバイスを聞き入れた子供たちの多くが低体温を改善させ、病気にかかりにくくなっています。「農」は医療より重要で、「食」は薬より効果があります。
・ベニヤ板、接着剤、集成材がぷーんとにおう『毒物の館』が普通の家。反対に、スギを生かした住宅に住めば病気を寄せ付けず、抗酸化物質ですから、病気や老化を防ぐ効果もあるでしょう。私たちは本来生き物が持っていた優れた効果を、単なる機械のように扱うことによってダメにしてきたように思うのです。ちなみに、スギにもヒノキにも殺菌効果がありますから、家ダニ駆除の効果があります。ですがヒノキのフィトンチッドには興奮作用がありますから風呂場に使うと元気になりますが、寝室に使うと眠れなくなるかもしれませんね。一方、スギには鎮静作用があり、気持ちを落ち着かせてくれますから寝室にはうってつけです。
・「いのちの林檎」というドキュメンタリー映画があります。無農薬で除草せずに作る「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんが出てきますが、彼が主人公ではありません。中心はCS(化学物質過敏症)患者の母娘です。
・「この世界に無駄な命などない」と考えるアミタ株式会社が、森で育てる酪農を鮮烈な形で復活させました。丹後半島の森の中で牛の放牧を始めたのです。しかも山地酪農では徐々に丘状にしていくのに対して、アミタの考える「森林酪農」では森のまま維持します。アミタで放牧されているのは種牛を除いて乳牛で、乳牛は一日一度、乳が張ってそれを絞ってほしくて牛舎に並びます。それ以外の時間すべて、牛たちは山の中を散策しています。雪が降る真冬でも牛たちは外にいます。出産するときも牛だけで自力でします。
森の中で牛に出会うと驚きますね。森の中で大きな動物に出会うことはないですから。ここで作られた牛乳は、成分の調整などせずに大手の百貨店で販売しています。週一回の販売、しかも市販の牛乳価格の7倍だというのに、これまで3年間、一度も売れ残ったことがありません。
アミタはその牛を、林業にも役立てているのです。牛は下草を食べてくれるので、夏場、人が立ち入ることができないほど密生する下草が、すかすかになります。そして牛は大きな図体で自然に枝落としをしてくれます。まるで下草刈りしたみたいな森になるのです。牛糞は一頭当たり一ヘクタールあれば、そのまま山の栄養になります。逆に草の成長量から言うと、一頭あたり二ヘクタールの面積があれば牛と雑草が共存できます。
これを林業に役立てたら、最大の費用がかかっている草刈りがいらなくなります。林業から考えると、コストをかけて乳牛を管理しなくても、雄牛を中心に飼うことで除草を任せることができます。
・ブタが耕運機代わりになるのです。放棄されて大分経って竹林になってしまった土地でも、根っこから掘り返します。生えている木も、根っこから掘り返します。ブタは土を食べますが、特に木の根の周りの土が好きなようです。柵をしておかないと、ブタは倒れるまで木の根を掘ってしまうのです。たいがいの耕作放棄地ならブタに開墾させるのが、一番早道な気がします。
このブタたちは健康です。健康だからおいしいのです。このブタ肉はあるシェフに認められて、北海道で洞爺湖サミットが行われたときの食材にも使われました。
・竹の中には乳酸菌が含まれています。そのおかげで竹を粉にしてビニール袋に入れておくと、発酵して「ぬか」そっくりなものになります。そこに生ごみを入れれば、臭いも出さずに二週間で分解され、それが堆肥になります。それどころか、その竹粉そのものが飼料になるのです。特に牛やブタは大好物で、竹粉を混ぜた飼料を与えると、その後は竹粉がないと食べなくなるほどです。堆肥としても有効で、竹粉を捲いたところだけ、草の成長が飛びぬけていました。
こうして使えたら、竹害が国産飼料になります。カロリーベースで日本の食糧自給率が40%と低いのは、配合飼料の輸入が多いためです。もし竹粉でまかなうことができたなら、日本の食糧自給率は52%まで向上することになります。
・もっと複合的な、自然に近い生産方法に戻すことが解決策になると思います。森は林業のためだけのものではない。農家は農業生産だけするものではない。畜産は畜舎で動物に配合飼料を与えるだけのものではない。それらが複合した形で生産されるとき、自然は元の形に戻り始め、私たちの生活はお金に頼らなくても生きていけるようになっていくでしょう。どこか生命の機能の一部分だけを取り出して、それだけを極大化・大量生産化させてきました。それが巨大農場だったり、巨大な畜産向上だったり、その他の向上だったり会社だったりしたのです。会社は私たちの能力のほんの一部分だけ取り出して、それだけで評価するところですね。そうではなくて、どんな人にも役立つ部分を見出すこと、役割を探していくことが大事だと思います。役立たずと思う前に、役立てられるものを見つけられていない自分を恥じた方がいいのではないかと。
・青森県の六ヶ所村で再処理工場の建設が始まった。これは、原子力発電所で使い終わった燃料を切って溶かして、廃液の中からプルトニウムを取り出す施設です。これまでトータルで3兆円かけて作った仕組みですが、ものすごい量の放射性物質を流すんです。1年間に流すことが許される最大の放射性物質の放射線量を「致死量」で割ると、なんと5万人を超えます。5万人分の致死量の放射性物質を、排水管と煙突から流していいことになっているのです。海に流していいと設定されている量は、最大4万7千人分に相当します。太平洋全体に希釈されて濃度が薄くなるから大丈夫だ、というのが理由です。
この建物はアクティブ試験中にセシウムで比較して広島に落ちた原爆の2.5発分の放射能がたまってしまい、もう建物を開けることができなくなっています。この中の一番寿命が短い装置はあと1年半しかもちません。でももう放射能漬けになってどうしようもない。この施設に投じた数千億円は、アクティブ試験をしただけで捨ててしまうことになりました。もう一つの系統を使って再開しようとしていますが、実用品にはならないでしょう。施設はこのままコンクリート詰めにしないといずれこぼれてきて、重茂漁協にも放射能が流れてしまいます。
・私たちが六ヶ所村再処理工場に反対しているとします。一方でお金を郵便貯金に預けていたとする。そうすると、預けたお金は意志とは関係なく工場に投じられてしまうんです。反対をしているのに、貯金という形で資金を与えることになるわけです。資金が止まらなければ、もし六ヶ所村の工場を止めさせることができたとしても、別の場所に新たな工場が建ってしまいかねない。そこにお金がある限り、永遠のむぐらたたきゲームをやらされることになります。再処理工場を本当に止めさせるためには、郵便貯金を止めるしかありません。
歴史をたどると、もっとすごいことがわかってきます。日本がアジアへの侵略戦争をしたときの戦争資金のうち、8分の1は税金から、残りの8分の7はなんと郵便貯金を使いました。
・イスラエルという国に最も援助をしているのはアメリカです。ODA(Official Development Assistance=政府開発援助)の対象国といえば、援助する必要がある貧しい国をイメージしますね。ところがアメリカが一番援助をしている相手国はイスラエルなのです。しかも軍事援助です。アメリカ自体は貿易赤字で財政赤字。カネがないんです。国債をほかの国に売って、資金を集めて援助資金を出しています。その国債を日本が買っているのですから、「私たちのお金が使われている」ということです。
具体的には、私たちの郵便貯金や銀行などから政府の発行する短期国債が買われ、その資金で政府は米国債を買っている。アメリカはそれで得た資金で、軍事援助をしている。つまり、パレスチナへの爆撃も私たちのお金のおかげで実行できたという構造になっているのです。これが、私たちのお金が引き起こしている現実です。
・基地を撤去した後の日本の安全は?と心配する人もいるかもしれません。しかし、アメリカの基地を全部追い出した国があります。南米エクアドルです。当然アメリカは怒りました。「なんで俺の基地を置かせないのだ!」と。そこでエクアドルの大統領は言いました。「じゃあ分かった。全部置かせる代わりに条件をつけよう。わが国に置いているアメリカ基地と同じだけ、アメリカ国内にエクアドル政府の基地を置かせてくれ」と。
これが対等な国同士の当たり前の論理です。明治期の不平等条約でない限り、普通はそういうものです。しかし、アメリカ国内には、他国の軍隊をおかせていないですね。こうしてエクアドルは、アメリカの基地を撤収させました。
・日本は、日本人が食べる分の作付けのために、国内に存在する農地の約3倍の農地を海外に確保しています。その国では、自分たちの生産する土地が奪われてしまって、自分たちの食べるものを作ることができない。これを「飢餓輸出」と呼んでいます。
・世界の貧しい国で3秒に1人の子どもが死んでいくのは、他国からの借金(債務)が問題なのです。子どもたちを救いたいのだったら、まずは債務を免除してやることが重要なんです。実は、途上国に世界で一番カネを貸し付けているのが、私たちの日本です。
・2005年に「ほっとけない世界の貧しさ」と呼びかけ、「ホワイトバンド運動」が広がりましたが、そもそも貧しい国を日本が放っておいてくれていたら、それらの国は貧しくならなかった。元凶の日本が、「放っておけない」なんて言っていたわけです。
・ヨーロッパには、「クラスター爆弾を作っている企業に融資してはいけない」と国会で決議した国もあります。儲かる話ですが、融資ができない形になっています。イスラム教は、そもそも兵器に融資できません。そんな中、全く制限がないのが日本。その結果、日本の三大メガバンクが、クラスター爆弾を作っている企業に世界で一番融資していました。「将来の暮らしを守る」つもりで預けたお金が、知らぬ間に世界中の子どもを攻撃することにつながっていたのです。
・市民の力は小さなものです。ですが無力ではなく「微力」なのです。
・世界銀行は何をしているところかというと、「世界の農業の自由化を進めている」ところなのです。これでは「農業自由化に反対して農協に貯金をすると、もれなく農業の自由化がプレゼントされる」という構造になってしまうのです。
・私たちが口で言ったり、祈ったりしたことは現実にはなりません。未来は、お金をどこに預けたか、どう使ったか、どう稼いだかによって決まるものなのです。
・私たちは、ナナメの方向として「未来バンク」というものを作りました。市民が自分たちで出資し、自分たちが望む方向にだけ融資する非営利のバンクです。未来バンクが融資の対象にしているのは、環境にいいことか、福祉か、市民が社会を作ろうとするような市民事業にだけです。
・皆さんが郵便貯金に貯金しても、農協に預けても、銀行に預けても、それらのお金の使い道を決めるのは必ず東京になります。みなさんがそのお金を使うことができるのは、公共事業を引っ張ってきたときだけ。しかもこれまでの公共事業では環境を破壊し、経済をダメにし、赤字を残してつぶれて消えていってしまいます。みなさんがそのお金の使い道の決定権を放棄し、東京に決定権を委ねてしまったことに問題があります。
お金がもし自分たちの手元にあって、そこで融資なり、投資なりされると、そこには必ず雇用が生まれます。雇用された人は何か食べる必要があるので、必ず生産を必要とします。つまり、経済循環を生み出す最初の一撃は、「地域がカネを持っていたかどうか」で決まるのです。だから地域の中にお金を残す。自分たちの地域に資金を残すことは、どうしても必要なことだと思っています。だから、未来バンクは大きくなるのではなくて、各地域にバンクを作ろうとする人がいるならそこに協力するのです。
・私たちがお金に関わるのは3つの場面です。「どう稼ぐか」「どこに貯金するか」「どこで何を買うか」ですね。「働く」「貯金する」「買う」、この3つです。
・地域の中でお金がまわる仕組みを考えることはとても大切です。なぜなら地域経済が活性化しているときは、必ずモノやサービスが回転しています。そのときには必ず逆方向にお金が回るのです。地域経済の活性化の程度は、「地域の資金量×回転数」で決まるのです。しかも「円」と「共通商品券」があったら、人々はまず先に「共通商品券」から使いますね。他の地域では使えませんから。そうすると回転数が高まります。不安定な通貨は回転数を高めるのです。
・ミスチルの櫻井さんは「僕は人並みには努力したと思うし、人並みには苦労したと思う。でも、人並み外れたお金を稼ぐようになってしまった。こんなことを続けていたら、いずれ罰が当たる」と。その矢先に脳の病気になったので、「そら見たことか、やっぱり罰が当たったんだ」と感じたそうです。音楽が大好きでミュージシャンになったのに、彼はお金が儲かり過ぎることに罪悪感を感じて、音楽をやることが嫌になりかけていたのです。彼は「ギフト」という言葉に特別な思い入れを持っています。世間では、よく「ギブアンドテイク」と言います。日本語に訳すと「やるからよこせ」ですね。でも同じことなのに、逆の方法もあるんです。「あなたに差し上げたい、どうか受け取ってほしい」と、「ありがとう、あなたの思いを受けとめます」という関係です。いうならば「ギフト・アンド・レシーブ」です。その循環に入れば、きっと彼のように良循環の中で生きていくこともできるのだと思うのです。
・NPOふうどが進めたバイオガスのプラントがあります。まず、地域の団地から生ごみを集め、それを空気に触れない形で微生物に分解させます。空気に触れないところで微生物が分解すると、メタンガス発酵します。メタンガスは別名「都市ガス」、燃えるガスが取れます。これをバイオガスと呼んでいます。残った生ごみ由来の液体は、すっかり臭くなくなって液体状の堆肥、つまり「液肥」になります。これを地域の有機農家に販売しています。そこから作られたコメや大豆を「液肥米」「液肥豆腐」として、ブランドづけして販売しています。ここがバイオガスプラントを作ろうとしたときに、ap bankが融資したのです。福岡県大木町は、以前は海に捨てていたし尿や生ごみを回収しバイオガスに入れたところ、ごみの量が実に44%も減ったのです。
・一面を緑にしたいと考えたとき、例えば法律で上から強制するみたいに一気に緑のペンキで塗ってしまえと考える人もいます。しかし、小さな緑の点をたくさん増やすことでも、一面を緑にすることができるのです。
・金利を2桁も取るような銀行から借りていてはダメです。現時点で経済成長率はたった1%ですから、その事業が2桁も成長するんだなんてあり得ません。そんな無理をしなくても社会を成り立たせられる仕組みを、自分たちで作ればいいのです。地域は今、国から公共事業をもらうことばかりに躍起になっている。そうやって国に頼ってばかりではなく、自分たちの経済を自分たちでつくる地域のモデルが、どんどんできればいいと思っています。
・お金は、「時間差」を作り出すことができるんです。その時間差が、すべての問題を引き起こしているのではないでしょうか。現在、ヤシから取れる油を使ってバイオディーゼルを作っている企業は、優良企業と呼ばれています。ヤシを取るためには、山の熱帯林を全て丸裸にし、ガソリンをつけてあたり一面燃やし尽くしています。トウモロコシや大豆からバイオ燃料が作られ、人々の食べる分を失わせてまでクルマを走らせる。しかしそれらの作物は、過去数百万年かけて貯まった水を使って作られ、間もなく砂漠に戻ることになる。そうやって将来世代をだめにしながら金儲けをしている企業が、「優良」とされているのが今の世界なんです。
・そうでない生き方もありました。ヒノキは成長が遅くて、育つまでにスギの倍、つまり約100年かかります。それでも人々は土まで背負って山にヒノキを植えました。しかし彼らは、自分の植えたヒノキで得することがないのです。なぜなら100年以上生きられることはまずないからです。では何のために植えたのか。子孫のためです。そんな彼らはなぜ生きていられたのか。祖先が植えてくれたヒノキがあったからです。だから彼らは祖先を大切にしますよね。それは当然です。今生きていられるのは祖先がヒノキという財産を残してくれたからなのですから。
・家庭内の光熱水費で最大なのは電気料金です。しかもその電気は、四天王だけで3分の2を消費しています。その四天王は、「エアコン、冷蔵庫、照明器具、テレビ」です。この4つだけで家庭の3分の2の電気を消費します。
・「リバース・モーゲージ」というのですが、その人が死ぬまではその住宅に住んでいたいが、死んでからは手放してもいいと考えていたなら、その人の住宅と土地の価値分を、年金として死ぬまで先払いする仕組みも可能です。亡くなったときには天然住宅がその土地と家を取得します。
・世界の紛争は、ほぼ5つの地域で起きています。「石油が取れるか、天然ガスが取れるか、パイプラインが通っているか、鉱物資源が豊かか、水が豊かか」の5つです。「宗教紛争」や「民族紛争」というのは、後から取ってつけた理由ですね。実際には、エネルギー資源をめぐる金儲けのために戦争が起こっているのです。だから戦争を避けたいのであれば、エネルギーに切り替えていくことが最も大きなカギになります。しかも日本政府が出しているグラフによると、石油は41年分、天然ガスは65年分、ウランは85年分しか残っていません(2006年現在)。石炭は150年分ありますが、天然ガスの2倍近い二酸化炭素を発生させるので、地球温暖化で滅びてしまいます。
ヨーロッパやアメリカが自然エネルギーに切り替えようとしているのは簡単な理由です。100年後の未来には、自然エネルギーしか頼れるものがないからです。
・家電製品すべてを省エネ製品に入れ替えた後、今の生活の電気すべてを太陽光発電でまかなうとなると、どれほどの発電装置が必要になるでしょうか。なんと8畳間1つ分強の広さ、2キロワットで足りるんです。8畳間1つ分強の広さがあれば自給可能になります。それがイラク人を100万人以上殺して奪ってくる石油と同じ価値です。命がけでやる原子力発電と同じです。馬鹿げてないですか?
・家庭の水の消費は、炊事、洗濯、風呂、トイレの4つでほぼ全部です。風呂の残り湯で洗濯すると20%ダウン。雨水でトイレを流すと24%ダウン。節水コマを入れて節水トイレにして、手洗いより食器洗浄機の方が水の消費が少ないから洗い物から解放されて、それでも水の消費量は減っていきます。
・家賃を部屋の広さで割ってみると、家具のためにたくさんの家賃を払っていることに気づきます。
・今、多くの人たちは会社にぶら下がって生きています。これは極めてセキュリティが低い生き方です。なぜなら会社をクビになると生きられなくなってしまうわけですから。会社に尽くし、会社に依存している状態、これではセキュリティが低すぎです。
・百姓というのは、百の生業を持っているから、たとえどれかひとつが不作であっても他の作物で暮らせます。多少のことにはびくともしません。とてもセキュリティが高い生き方です。様々な方法で、様々な収入源を得るような生き方をしてほしいのです。そうすることで、私たちはもっと自由になれる。仮に会社をクビになっても、自殺なんて考えることもない。
・地産地消を実現することは、つながりを実感する一番の近道です。しかも同時に、温暖化防止の意味でも、私たちにできる最大の効果を持つものです。経済はグローバル化すべきものではなかったんです。知恵や交流はグローバル化すべきですが、相手の顔が見えないグローバル経済化は同時に無責任化させるからです。
・緑の革命により生産量は40倍に増えたかもしれませんが、その土地は10年とたたずに固くなってしまって何も取れなくなりました。十分な排水設備もないまま進めた灌漑は、蒸発と共に土壌中にあった塩分を吸い上げ、塩害によって何もそだたない荒れ地にしてしまいました。もともと1しか生産がなかった土地だったかもしれないけれど、過去1万年もの間、農地として受け継がれていました。40倍になったと言ってもわずか10年ももちませんでした。1万と400、どっちが大きいですか?
・電気というのは、発電・送電・配電、その3つに分けることができる。発電と配電はどんな事業者がやってもいいんだけども、このまん中に入る送電線というものは、これは本当に公共財です。車にとっての道路のようなもの、すなわち、道路のあちこちに関所を設けられてしまったとしたら車はもう走ることができない、現状の電気はそういう状況です。いろんな人たちが、例えば、北海道ではたくさんの風車を建てたがっている、ところが送電線を握っている北海道電力はそれを買おうとしない、そのおかげで日本では自然エネルギーが伸びない、という構造になっている。この送電線というものは、本来公がもって自由利用にすべきものです。
・日本の場合には、メディアが、テレビ・ラジオ・新聞が同じ系列で動くという形になっている。これは諸外国では情報を制限してしまうことになるので禁止されていたりするんですが、日本では、テレビ・ラジオ・新聞が同じ資本でやっていて、そこの最大の広告宣伝費のオーナーになっているのが電力会社、そのおかげでまともな情報が流れない。日本の中でメディアを握ってしまっているのは、はっきり言ってエネルギー産業、しかも電力会社という構図になってしまっている。
・電気消費のピークは実は毎日は出ません。1年8760時間ありますが、その中で10時間以下しか出ません。しかも日本最大の東京電力のピークは、これは定式があります。ピークが出ているのは、夏場・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたとき。そしてこのピークに家庭は最も消費しない時間帯に当たっています。なんとピーク時の91%の消費が家庭以外の事業者によってのものです。
・事業者の電気料金は使えば使うほど単価が安くなるようにできている。一方で家庭の電気料金は途中まで安くなるんですけれど、途中からは使えば使うほど高くなるように作られているんです。
・私たちの不幸は、会社などに所属して努力することが、将来の滅亡や遠くに住む人たちの不幸につながってしまっていることだとぼくは思います。


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