2009年11月14日土曜日

映画「沈まぬ太陽」

いやぁ、深かった。感想として、しばらくそれしか出てこなかった。

個人的にもこの作品は思い入れがあって、2年前の2007年夏に初めて全部を通して読んだとき、ちょうど自分は今の会社の組合の中核委員だった。それで、「なんなんだこの会社!」って思いながらもどかしい思いを持ちながら読んだのをよく覚えてる。
その当時、自分の相談役みたいになってくれてた人に感想を話しながら、「絶対おかしいよ」って「正義のための」働き方と、「でもね・・・」って「資本主義の中での複雑で政治的な」働き方の間で、混乱しながらも徐々に世の中を教えてもらってったのを思い出した。
あれがなかったら、俺はダークサイドに落ちてたかもしれない。

目先の利益や、会社で周り(特に上層部)からの信頼を得ることを追求するのは、自分の存在価値を示すために必要って考え方もあるし、偉くなれなくても愚直に与えられた仕事をマジメにこなしていくって考え方も必要だと思う。時には、自分の信念にそぐわない対応を迫られるときもあるし、たとえそいつが仕事できなくても自分の言うことをきく部下を抜擢するのは、1人ではなく複数人で仕事をしていく組織の中で生きていく上では、当然の判断のようにも思う。
自分の信念を通したくても、家族や仲間を守るために通すことを諦める、我慢を強いられるような場面だって当然のように出てくる。その中で、平穏に過ごすことなんてできやしない。
ボーっとしていたら置いてかれる。

お前用なし、ナマケモノ。
日々日々進歩、俺ケモノ。

事件の場面も、その後の場面も、国や政治の世界のドロドロも思ったことや言いたいことは山ほどあります。ただ、全てをここに書くことはネタばれにもなるし文字数もあるんで、個別に会って直接話せればなと思う。そういう話なら、俺は何時間でも付き合いますよ。

ただ、1つだけ書かせてもらうなら、俺は途中から長男のカツキの視点でこの映画を見るようになってました。元々、時代的にも主人公の恩地さんたちの世代をそういう風に見ながら育ってきた自分にはそれが自然だったし、今までの自分と親父とのやり取りの中にこの映画中と同じような場面があったりして、「これわかるな~」って思い出しながら見てたってのもある。

その中で、俺はこの映画に出てくる会社や登場する人たちが最低であればある程、「自分の親父がこの人で良かった」って思いを強く持ちました。どんな会社にも欠点はあるし、自分が我慢を強いられる場面、逆に家族に大変な思いをさせることもある。どうにもならないような不条理を受け入れなきゃいけないこともあったかもしれないけど、それでも1つの会社で自分の仕事をし続けて、楽しそうに仕事をする姿を見せてくれたり、親父の仲間に会わせてくれたり、会社を、そして家族を何十年と支え続けてくれた事実には本当に頭が下がります。改めて、感謝をしたいと思ってます。親父自身は、そんなこと考えて仕事をしてきたわけじゃなかったのかもしれないけども。^^;
で、中でも、「俺たちは命を預かる仕事をしている」って言葉を親父から聞かせてもらえたこと。これは何年経っても自分の働き方にすごく影響を与える一言になってます。それも一度じゃない、飛行機の事故やニュースはもちろん、電車や車の事故の時だって話をすれば必ずこういった言葉を聞けた。一整備士のプロ意識として、本当に大事なことは自分の名声や評価じゃない。1つ1つの仕事が人の命に直結していることを認識して、少しでも仕事の精度を上げること。安全の確保につとめること。できること、考えられることを探して工夫して、改善していく姿勢を持ち続けること。多分、息子が親父から学べる仕事に対しての姿勢として、これ以上のものはないと思ってます。そして、そういった信念を持ってどんなに僻地に飛ばされても、どんな過酷な仕事を与えられたとしても真摯に目の前の仕事に取り組む映画中の恩地さんの姿を見て、なんだか親父を見ているようで嬉しく思いました。

この作品は、娯楽映画ではないです。
でも、考えさせられることがたくさんある、非常に意味のある作品だと思います。
後輩に「これ絶対読めよ」って渡した原作がしばらく帰ってこないとこ見ると、あいつは読んでないんだろうけど、これなら3時間で見れる。早速紹介してみようと思います。その後で、興味があったら原作を読んでくれたらいいなと。
できれば、DVDになってからでもいいから絶対に見て欲しい1本です。

今はこの時代と少し変わってしまって、こういった人たちはもう出てこないと思う。
それは働く人にとっては幸せなことかもしれないし、企業からしたら不幸せなことなのかもしれない。

ただ、自分たちはそういった人たちから与えられたものをしっかり受け止めて、見せてくれたことからしっかり学んで、そいつを次の世代にきっちり渡していく必要はあるのかなと思います。全部を伝えることはできなくとも、本当に大事なことを教えられるだけの先輩として、後輩と接していければと思いました。

明日、死ぬかもしれない。大切な人がいなくなるかもしれない。
だからこそ、この一瞬に手を抜かず、大切な人に触れ合える喜びを感じながら、一歩ずつ生きていこう。

争いより 語り合いを大事に
殺しあいより 出会いを大事に
けなし合いより 認め合える関係を
潰し合いより 助け合える関係を
大切に生きていこう、大切に

偶然にも運命にも同じ時代を生きているのだから。

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