この年末年始はどこにも出かけず、ひたすらYouTubeで多摩美術大学の「Tama Design University」という企画展のアーカイブを見ていた。7日間で全45本、1日平均7本弱。1本約1時間だから毎日平均7時間はここに費やしていた、という計算になる。でもそれだけの価値があったし、おかげさまで年末より知見も広がった充実感を感じている。
それもこれも独身で家族の集まりも少ないならではの年末年始の過ごし方と言えるかもしれないですね(墓参りや一緒にご飯くらいはしました)。まぁ人は人、自分は自分のやりたいことをするのだ。
で、そんな「勉強しまくった」話を仕事始めでオフィスに出社したので話していたら、いろんな人たちに興味を持ってもらえたのでせっかくなのでオススメのタイトルを紹介してみたい。
■松島靖朗 (認定NPO法人おてらおやつクラブ代表理事/安養寺住職)
福井良應 (認定NPO法人おてらおやつクラブ理事/興山寺住職/京都府立大学/大阪経済大学非常勤講師)
- おてらおやつクラブというグッドデザイン賞を獲ったひとり親家庭の支援活動の紹介。
- 活動に至った経緯は割とどこにでもあるような話なのですが、そこからの育て上げ方がすごい。優しい。頭いい。
- 日本中に社会のOSとして存在し機能してきた「お寺」という存在の可能性を大きく感じた1本でした。
- お坊さんのイメージも変わりますね。
■小橋賢児 (The Human Miracle代表/クリエイティブディレクター)
- 役者として活躍し、その後パラリンピックのディレクターを務める小橋さんのこれまでの生きてきた道を紹介してもらいながら、塞翁が馬を地で行くストーリーを感じられる1本でした。
- あれもこれも皮算用をして足許がおろそかになる活動をいくつか見てきたけど、そうなりがちな人に見てほしいと思いました。
- 僕は、この話を聞いて「コブ取りじいさん」の話を思い出しました。
■中村勇吾 (多摩美術大学 統合デザイン学科 教授/インターフェースデザイナー)
インターフェースデザイン「なぜ私たちは画面の中に質感を感じるか?」
- デザイン、という視点でとても面白かった話。画面に質感をなぜ感じるのか、そのとき自分は何を読み取っているのか、について視点が増えました。
■上田壮一 (一般社団法人シンク・ジ・アース理事/多摩美術大学 情報デザイン学科 客員教授)
教育デザイン「社会・環境への無関心を好奇心に変える教育デザインとは?」
- 最近の教育のものすごさ、そしていい教育をしているところと、これまで通りの教育に終始してしまっているところで生まれる格差をものすごく感じた1本。
- 学校と広告会社が一緒に授業をつくりあげると、こんなにも面白く学びのある授業がつくれるのか、という鬼太郎の話や、現地に行くことでわかることを訪ねるツアーから生徒がぐんぐん成長していった話など、ワクワクする話がたくさんありました。
- シンク・ジ・アースの取組に一時期注目していた時期はあったのだけれど、そこから離れてしまっていたので、その間にこんな活動が展開されていたのか、ということを知れたのもよかったです。
■西成活裕 (東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
ロジスティクスデザイン「今後の交通・人流・物流のデザインとは?」
- この1本はほんとにおもしろかった。虫の生態から、渋滞をどう解決すればいいのか、それは人混みをスムーズに流れるようにするための工夫にもつながっていく、という視点は研究者ならではで、「なるほど」と思うことの多かった1本。
■施井泰平 (スタートバーン株式会社 代表取締役)
アートインフラデザイン「NFTで広がるクリエイティブの可能性とは?」
- NFTに至るまでに過去から何が生まれ、そのために出ていた課題をどう克服してきたのか、そしてそこから考える今後のビットコインやNFTの可能性について語られていて、学びにもなるしこんな風に言われたらNFTもチェックせざるをえなくなるような内容でした。これもなかなか聞けない話で、貴重な授業でした。
■稲見昌彦 (東京大学先端科学技術研究センター身体情報学分野教授、博士(工学))
- 身体が拡張する、SFや未来の話を現実の世界の中でどう実装していくかの研究はとても興味深く、今のeスポーツの流れなんかも汲んだ話はとても新鮮な上にIoTやAIをどう社会実装していくのかについてイメージのしやすい話で、こんなことまでできるようになっているのか、という驚きとともに見ていました。
■丸山 新 (&Form代表/デザイナー)
ビジュアルコミュニケーションデザイン「行動するデザインとは?」
- 行動力で自分の世界を広げていく、というのはこういうことをいうのだ、という経験を話されていて、こんな人もいるのだとワクワクしながら聞いていました。世界にはまだまだ知らないすごいプロジェクトを仕掛けている人もいるし、ずっと豊かに暮らしている人たちもいる。大きな可能性を感じて、自分たちも何をここから仕掛けようかとか考えたりしました。
■古結 隆介 (エムスリー株式会社 CDO(Chief Design Officer)/ プロダクトデザイナー)
- 医療を前進させるために自分たちがいて、1秒でも速く、そして1円でも安くという想いとともに働かれていることがとても伝わってくる話でした。
- 一緒に仕事をするなら、こういう人と仕事をしたいよなと思わせてくれるような発表、そして取組で、好感を持ちましたね。
■濱田芳治 (多摩美術大学 生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻 教授) *ONLINE
デザイン教育「感度・解像度を高めた情報の読み取り/表現とは何か?」
- 解像度をあげていくための具体的なアプローチの方法を誰でもできる方法として紹介していて、とても勉強になりました。こうやって伝えればいいのかとか、こういう視点を持って考えていけばいいのかとか。
■松川昌平 (博士(工学)/慶應義塾大学 環境情報学部准教授/000studio主宰)
アルゴリズミックデザイン「植物を育てるように建築を育てることは可能か?」
- 2020東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムがどうやってつくられたのか、その秘密のルールを解き明かして、同じルールが適用された別の形のエンブレムをつくっていく話はとても興味深かったですね。面白かったです。
- パターンの可能性をどうやって導き出し、それを自分たちの暮らしに活かしていくのか。そんな視点で考えることができれば、今まで考えつかなかったようなデザインもできそうでこれからの世の中に、「まったく予想もしなかったけどできてみたらこれしかないと思える」ような製品が出てくるんじゃないかとワクワクしながら聞いていました。
■前野隆司 (慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授/ウェルビーイングリサーチセンター長)
ウェルビーイングデザイン「人々を幸せにする製品・サービスのデザインとは?」
- イノベーションと幸せは同じ方向を向いていて、だからこそ従業員が幸せなことが仕事にもいい影響をもたらすのだ、そしてその幸せをつくるにはこういうアプローチが有効だ、という話は、職場の雰囲気づくりとしても、自分の生き方としてもとても共感できる話で、楽しく聞けました。心がけていきたいポイントがたくさんありました。
■吉田泰己 (経済産業省 情報プロジェクト室長/デジタル庁 企画官)
ポリシーデザイン「デジタルテクノロジーを通じて社会システムはどのように変わりうるか?」
- 官僚や役人と聞くとどこか「現場、まちで暮らしている人たちのことをどこまでわかってくれているのだろう」と思えてしまったりもしますが、この人に見えている世界と今の日本のギャップを埋めるべく、こういった取組をしている人もいるのだと思うと嬉しくなりました。また、ITインフラ系の話もそうですが、レイヤをイメージして話すことは話の全体像を崩さないで建設的に話を前に進めるために必要だ、という考え方とか共感する部分も多く、聞けてよかったと思った1本でした。
■石塚尚之 (Niantic Staff UX Designer)
- 経歴も面白いし、自分もMAPとアクションを掛け合わせる可能性を感じている1人でもあるのでとてもワクワクしながら話を聞いていました。
- なにより、プレゼンがめちゃくちゃ上手!こういうプレゼンができる人になりたい、と誰もが思いそうな話の進め方、間の取り方でそれだけでも聞く価値があるかなと。ドラクエウォークやポケモンGOにはまりながら、健康的になっている人たちもいると思うのでそういう未来に寄与する取り組みを仕掛けられる人になっていきたいと思った1本でした。
学びたい欲がどんどん出てくる、いい企画展でした。
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