2008年12月31日水曜日

本「感じる脳」

<本の紹介>
米国の著名な脳科学者である著者が、多くの脳障害・損傷患者の研究から導き出したのが、身体反応(=情動)を脳が受け取り感情を生みだすという考えです。これとほぼ同じ考えを持っていたのが、哲学者・スピノザでした。本書は最新の脳研究とスピノザの哲学的思考がどのようにリンクし、同一の考え方に至ったのかを説いた一冊です。

すーっげぇ難しい本でした。まるで論文。
途中で頭痛くなりながら読んでたんだけど、ただ最新の脳科学については興味あったんで一気に読みきりました。前半は脳科学の実験症例を絡めた脳の仕組みと感情について。後半はスピノザの経歴と時代背景、近代に至るまでに受けた評価の紹介。

感情、情動、反応、反射、、、これは全て違うことを指していて、感情は人類だけにあるもの。でもない。笑
脳だけの生物はいないけど、脳のない、身体だけの生物はたくさんいて、これはつまり生物学的には脳よりも身体の方が先に生まれ、重要な器官となっていることを指している。そして、感情は脳の中で作られた「身体が受けた情動」のマッピング図から、自分の感情を認識する。

そして、そういった脳の作りを模倣したような構造はこの世の中の様々な場所で起こっている。家族の中で、社会の中で、組織の中で。まだまだプロセスとしては改善の途中って感じだけど。個より集団を重んじるのは、個ではできないメリットが集団にはあるからであり、集団にマッチしないものがあまり好まれないのは、集団で動くメリットを自分たちが享受できない可能性があるからであり、それは自分たちそれぞれの「個」を危険にさらすことと同義になる。納得。
で、集団を統率する為には、全体をマッピングする機能が必要になる。これは、集団を管理する部分が即座に反応できることが必要とされる為。そして、そういったマッピングの精度は先天的に生まれ持った人間としての判断基準や生きていく為の最低限感じられなきゃいけないレベルの他に、潜在的に遺伝子にプログラミングされているものもある。それは、一度そのような環境、シチュエーション、経験をすることで目覚める。だから、成長することでその精度は上がっていくし、経験したシチュエーションの数でその人の脳内の引き出しの数は増減するから個人差になる。同じ生き方をする人が2人といない世の中だから。
そういう意味じゃ、「生まれ持った才能」も大事だと思うけど、後天的な「どう育ってきたのか、何を経験してきたのか」ってとこもやっぱり人が育つ上で大事な要素になるんだなと改めて思いました。あと、そのシチュエーションを仮に自分で経験していなくても、似たシチュエーションからの類推によって能力を呼び起こすことも可能になるんだそうだ。ってことは、想像力豊かな人の方が人間の幅が広がるってことなのかな。俳優なんかがああいった実際にその職業に就いたこともないような演技もできちゃったりするのは、これがめちゃくちゃ得意だからこそって話なんだって。
同じように、すごいへこんでる時に楽しい思考パターンに無理やり持っていくと急に楽しくなったり、気分が急に変わったり体調がよくなったりするのも、そういう情動による電気信号を脳が受けて、マッピング図が変わるから、脳が感情を変えるんだそうな。そしてそれは、自分の意識と別に作用する場合もあるんだって。実際の検証結果からそういった結論が出てるってんだから、近代科学ってすごいなと。
なんとなく、自分の認識とずれてるとこもあったけど勉強になりました。

そしてそれを実験的なことをまるでせずにかつて同じ結論にたどり着いた哲学者、スピノザ。
こいつもすごい。だけど、宗教的な要素の強い時代にこんなこと言ったもんだからすっごい迫害を受けてしまったって話。彼が書いた本も、出版禁止になってほとんど見つからず、歴史に埋もれそうなところを細々と「これは後世に残すべきだから」って受け継いできた先達の方々。

俺らが後世に残すべきはなんだろう。
そんなことも考えながら、脳にとっての「快」の状態を維持しながら前に進んでいきたいと思いました。

めちゃめちゃ勉強にはなるけど、多分これ読める人ってあんまいないと思うんで読まない方がいいと思います。苦笑

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