2006年9月22日金曜日

逃亡のような追跡

魂がまた逃亡した

残された身体はまず溜息をつき
愛する人に短い手紙を書いてから
沈む夕陽へとハンドルを切る

魂の逃亡は
無理に大人を演じてきた
自分への復讐なのか?
用意されたエピソードを選ぶしかない
未来への警告なのか?
それとも夢の荒野を走り続けた
無頼漢への憧憬?

俺はいつしか
見知らぬ風景の中にいる
初めての街には
迷うための道があり
孤独を映すための月が出る
24や60で割り切れない時間が流れ
言葉の通じない北風が吹く

そこにあるのは
ざらざらとした違和感
ヤスリのような疎外感

自慢だった人生の垢は擦り落され
俺はヒトという生き物に戻る
ヒトは失っていた情熱を猛烈な速さで思い出し
あっという間に魂を捕獲する
そして不安の中に潜む自由の匂いを嗅ぎ当て
新しい俺がまだこの世界のどこかにいることを教える

生きるということは
生きてゆく自分が
生きてきた自分に
闘いを挑むことだ

魂は逃亡し
身体がそれを追跡する
その密かな祭りのような数日を
人は 旅と呼ぶ

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by森雪之丞

師匠の詩は、俺に元気をくれるから好きです。
数えきれないくらい読んだこの詩をまた読んで、
俺はまた旅に出たくなりましたとさ。

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