2014年8月15日金曜日

自転車道について

■自転車を交通行政に組み込むために重要なこと

▼目的と手段をはき違えない
  • 自転車はあくまで多様な目的のために活用される交通手段の一つにすぎないのであり、自転車導入を目的としないことである。とかく環境と健康によいから、自転車を導入することが目的であるなどとするのは、手段と目的とを混同しており、本末転倒である。自転車の持つ様々なメリットを生かして、これを手段として使うことが肝要である。
  • また、その利用目的は観光なのか、業務なのか、日常利用なのか、健康なのか、環境なのかなどを明確にすることが大切である。よく、自転車の導入目的は、これらの全部である、又は、環境負荷削減、健康増進などであると説明されることがあるが、焦点がぼけた、又は抽象的な施策となり、決して成功しない。結局その目的の利用需要がどの程度確実にあるのか、その利用需要を満たせばどの程度の具体的な効果があるのかなどを考察しないで、抽象的かつ曖昧なままにしているケースもある。
▼ストーリーが必要
  • 目的がしっかりしていても、目的との関係でストーリーが必要である。ターゲットは、普段自転車に乗らない人又は自転車愛好家でない一般の自転車利用者なのか、趣味で自転車に乗る人やヘビーユーザーなのか(人口比でいえば前者の一般利用者が圧倒的に多い)。これによっても、用意する空間やしつらえが異なる。
  • さらに、例えば観光目的でクルマを利用して来た人がこれを駐車場に置いて、そこにあるレンタサイクルに乗り換えるとか、その後どのような観光地を回遊するかなど自転車利用のストーリーが設定されていることが重要である。
  • クルマでくる人が多いのに、レンタサイクルが駐車場とリンクして提供されていない、さらに、走行する空間が自転車にとっては狭い、交通量が多いなどシビアーである実態がみられる。逆に、立派で安全な自転車道はあっても、訪れた人は自転車を持っていない、また、自転車を持ってくるとしたらある程度の自転車ユーザーであるが、単なる「立派な」自転車道では満足しないので、やって来ない。レベルの高いユーザーを満足させるに足る仕掛けやシステム、感動等が必要である。
  • また、住民の自転車保有率が高い地域で、住民の日常利用を目的としたコミュニティサイクルを、住民向けに投入するにはそれなりのストーリーが必要である(外国のコミュニティサイクルは、自転車保有率が低い又は自宅に駐輪空間がない、盗難が多いなどで利用されているケースが多い)。
▼自転車の活用を図るための体系的な仕組みが必要
  • 自転車は、例えば、単発で、自転車道、レンタサイクルなどを用意したからといって、すぐに利用されるわけではない。これは広報不足の問題ではない。自転車を活用するストーリーの中で、必要な自転車の位置付け、ハード、ソフトの総合的な連携した施策が必要である。自転車活用の目的や目標といった総論、自転車利用空間(目的地までの走行空間プラス目的地での駐輪空間)のハード面の施策、目的に合わせた走行空間の情報提供、的確なもてなしの提供などのソフト面の施策などを体系的に組み立てることが必要不可欠である。
  • 例えば、道路状況が不案内な観光客をターゲットにする場合、レンタサイクルを用意しているのに、自転車地図が単なるコースとスポットのガイドのみであり、提供しているコースの安全性や快適性の表示や確保などがないケースも見られる。また、自転車をもっと地域活性化に活用してもらうための自転車利用を奨励するメリットの提示や特典の提供及びルールやマナーの周知徹底など安全面の広報啓発も必要である。単なる観光客といって、これらをあいまいにすることは許されない。
  • 植樹帯で構造的に分離されていても、歩道と出入口部分が一体化していると自転車用の空間である事が分かりにくく、自転車通行指定部分を歩く歩行者が出てくる。タイル舗装は止めてアスファルト舗装に変更し、「いかにも車両用の道路」という雰囲気を出す必要がある。
  • 信号機は歩行者と分離した方が良い。
  • ポストや電柱が自転車に配慮されていないことが多いので、十分な配慮を。また交差点では歩行者の滞留スペースに自転車を突っ込ませる形も多い。この構造はマズい。
    1. 歩行者の滞留スペースを民地側にセットバックして自転車専用の通行空間を直線的に確保するか、
    2. 自転車の通行空間を交差点周辺で緩やかに民地側に湾曲させ、歩行者の滞留スペースは交通島として独立させる工夫が必要。
  • 自転車通行指定部分の延長線上をバスベイが唐突に削り取っているケースもある。縁石も低くて簡単に通過できてしまうことばかり。バス停横の歩道空間は自転車の動線が全く考慮されず、設計努力を完全に放棄している。(しかも歩道上の白い区分線は自転車をバスベイに誘導しているというケースも。)
  • 歩行者空間が歩行者の通行量に対して過剰に広く、自転車通行空間より広々と走れる場合は、当然自転車は歩行者空間を走りやすい。
  • 車道と自転車道・歩道とのコンフリクト・ポイントを最小化するという視点からは、幹線道路沿いには自前の車庫は使わせず、車道の端に駐車スペースを設けてそれを賃貸しする方が良いです(歩道の無い細街路は別)。賃貸料の設定次第では自家用車の所有自体を断念させる効果も期待できるので、社会のクルマ依存度を確実に引き下げる装置として有望ですね。或いは、幹線道路に面した土地への出店を抑制し、幹線道路に囲まれた内側の区域での商業活性化に繋がるかもしれません。謂わば、街の構造を〈イチジクの実〉型に転換するという事です。
  • 道路ネットワークの血管的な機能分担(大動脈と毛細血管)を実現する上でも、商店街地区で歩行者を主役にし、車の過度な進入を防ぐ上でも、イチジク型の構造は理想的。
▼左側走行について
  • 車道走行よりも挑戦しやすく、自転車事故抑止の一番の特効薬。
  • 現在の道路交通法では、自転車の通行場所は下記。
  • 歩道と車道の区別のある場所であれば、車道の左側。
  • 自転車歩行車道は道路の左右どちらも通行可。しかし、左側走行をすれば車と同じ動きとなり正面衝突事故を避けられるし、交差点事故の減少にもつながる。
  • 警察庁によると、2009年の自転車事故156,373件のうち、交差点での発生は113,761件。自転車事故全体の73%。
  • 右側通行の自転車は、ドライバーにとって左側の道路から急に姿を現すことになり、事前に自転車の動きを察知するのが難しい。左側通行であれば、車と同じ動きをするのでドライバーは自転車の動きが目に入る。左折する時の巻き込み事故を注意すれば、両者が安全に走行できる。
  • ただ、いまだに自転車の右側走行を勧められるケースもある。背景として自転車を歩行者の仲間と考えていることや、右側走行をすれば向かってくる車が見えて安心だと勘違いするケースがあるが、追突に比べ正面衝突すればぶつかった衝撃は大きくなり、重大な事故につながってしまう。非常に危険。
  • 海外と比較しても、日本のように自転車の走行方向が確立していないのは珍しい。ただ、国内でも2016年6月の道交法改正で、歩道のない道路の端を白線で区切った路側帯を走る場合「左側通行に限る」と決まった。
  • 全国の道路約120万kmのうち、歩道のない道路は約100万km。このうち路側帯のない道路(車道)では、もともと自転車は左側通行のため、この法改正によって全国の道路の8割は自転車の右側通行が禁止されることになった。

0 件のコメント:

コメントを投稿