2020年1月19日日曜日

まちづくり事例集

■ツール

▼組合せ
  • 学生が地域に興味を持ち、まちづくり活動に加わるきっかけになるツールが必要となる。例えば「フィールドワーク」「プチインターンシップ」「ポストカード」「ポッドキャスト」など。フィールドワークを通じて地域をしっかり観察し、プチインターンシップを通じて地域の活動に参加し、ポストカードで地域の特性を整理し、ポッドキャストで情報を発信する。
  • 意図的に「小さなメディア」を使って情報発信する。まちに住む人がまちを説明する。その声を録音してポッドキャスティング配信する。小さなメディアを活用することによって、顔の見える関係性を新たに構築することができる。
▼地域新聞
  • まちづくりはキーマン同士が出会うことによって大きく飛躍することが多い。
  • この点に着目し、キーマンが主宰する地域のイベント情報を共有財とするための「地域新聞」を紹介した。地域のイベントを「いつ誰がどこで開催するのか」を集めたポータルサイト的な地域新聞の存在は、まちのキーマンが出会う機会を提供し、さらなるまちづくり活動への展開を期待させるものである。
  • また、コミュニティデザインは、各個人の「自分事」と「他人事」との間にある「自分達事」であるとの発想から、重要な「自分達事」を編集して情報発信するメディアのあり方についても言及した。特にグリーンマップや「関心空間」など、web2.0のツール(SNSやSSRなど)を活用した「自分達事」の編集方法は、これからのまちづくりを新しい段階へと進化させる可能性を持っている。
  • 任意の市民の顔写真を使ったポスターをつくり、まちの将来についての希望を沿えてまちの主要駅に掲示する。100人近い人のポスターが掲示されると、駅を利用する人たちのなかに知り合いがいる確率は相当高くなる。駅に掲示されているポスターを見たことがきっかけで久しぶりに連絡を取り合う人が現れたり、まちの将来像について語りあうきっかけになったりする。こうした個人に着目したまちづくりの方向性は、web上で展開されている人と人との結びつきとは違ったアナログな、しかし力強い結びつきをまちに作り出すこととなる。
▼地域診断書
▼ウワサ
  • インターネット上で友ヶ島に関する噂を流しまくるというプロジェクトである。害の無い噂であればなんでもいいから、関係者やその友人を通じて噂をばら撒く。「友ヶ島って一体どんな島なんだろう」と気になるくらい多様な噂がサイバー空間を漂えば、それらを見た人のうち何人かは実際に友ヶ島を訪れてみたいと思うのではないか。
  • 実際に友ヶ島へ訪れれば、国防遺跡が有する強烈な印象に圧倒されることになるだろう。それだけの力を友ヶ島は持っている、と思う。「友ヶ島は面白い場所だ」といくら声高に叫んでも、実際に友ヶ島へ訪れてくれる人は限られている。その方法で人が集まるのであれば、既に観光地として繁盛しているはずだろう。新たな来訪者を呼び寄せたいのであれば、これまでとは違う方法が求められるはずである。
▼カードゲーム
  • 景観まちづくりカードゲーム
    • 札幌の景観や都市計画に関する情報を基に考案されたトレーディングカードです。自分のまちに見立てた場(フィールド)にルールに従ってカードを出していき、カードに書かれた数値=MP(魅力ポイント)の合計を競う2人対戦型のゲームとなっています。
    • 友達や親子でゲームを楽しみながら、景観や都市計画について考えるきっかけを作ります。
▼パンフレット
  • オニの金棒パンフレット
    • 少し特殊な形のパンフレットである。通常のパンフレットの比べて少し細長い。地域の民話にちなんで「オニの金棒」を模したデザインとなっている。
    • スーパーやカフェに置いてもらうためには、設置面積が狭くて済むパンフレットであることが求められる。細長いパンフレットを立てて置くのであれば、お店から借りる場所の面積は少なくて済む。その割に、立ち上がった金棒のパンフレットは目を引く。子どもならつい手に取りたくなるだろう。手に取れば、子どもはこのパンフレットで近くに居る人を攻撃したくなるはずだ。紙でできた金棒のパンフレットは、ついつい近くに居る人を叩きたくなる形なのである。スーパーで子どもの近くに居るのは保護者だろう。叩かれた保護者は、子どもが手にしている金棒のパンフレットを取り上げるか預かることになる。そこで「あそびの王国」の存在を知ることになる。三田市に子どもの遊び場がオープンすることを知る。「じゃ、来週の日曜日にでも行ってみようか」ということになる。
    • そんな筋書き通りにことが運ぶかどうかはわからない。わからないが、子どもも大人も手にとってみたくなるパンフレットを目指したつもりだ。「おしゃれでかっこいいパンフレット」ではないが、子どもや大人にとって「なんとなく気になるパンフレット」になればいいなぁ。
▼本
  • 高知遺産
    • 「高知遺産」は2004年に高知市のギャラリーgraffittiで4回にわたって開催された展覧会【高知遺産】で参加者および来場者よりセレクトされた400点あまりの高知県の「遺したい」あるいは「大切な」建築、まち、風景を紹介した「高知本」です。
    • 「高知遺産」には高知県と聞いたときに思い浮かぶ、龍馬もはりまや橋も四万十川などの観光地は載せられていません。そこにはいま高知に住む人々が面白いと思うもの、あらためて掘り起こしてみると興味深い歴史が見えてくるものなどが南国の青い空を背景にした美しい写真、テキストによって紹介されています。この本、片手に高知を放浪してみたくなる、そんな一冊です。
    • 高知県ではベストセラー、県外でも取り扱い書店が少ないにもかかわらず増刷を重ねているこの「高知遺産」は驚くべきことに出版社ではなく有志たちの手によってつくりだされました。
▼はし袋
  • 「十日町×十日町プロジェクト」。このプロジェクトで曽我部さんは、割り箸の箸袋をデザインしている。さらにその割り箸を使ってもらうために商店街の各店を回っている。箸袋には、その町に存在する面白いネタが印刷されている。箸袋から町のネタを仕入れた人が改めて町を眺めたとき、その風景が違って見えるとしたらそれも建築家の仕事だろう、と曽我部さんは言う。同感である。
▼水筒
  • 「すいとう帖」プロジェクトは面白い。要するに、ペットボトルをやめてみんなで水筒を持とうぜ、というプロジェクトである。タイガーや象印など、魔法瓶の会社はすべて大阪が本社であること。それゆえ、魔法瓶協会も大阪にあること。環境面からもペットボトルの使い捨てよりも水筒を使うのが良いこと。水筒からコップに注いだお茶を人に勧めることができること。コミュニケーションを促進するツールになること。各人の「家の味」を持ち歩けること。そんな理由から、みんなに水筒の良さを伝え、水筒を持ち歩く文化を作ろうというのが「すいとう帖」プロジェクトである。このプロジェクトが広がれば、水筒に飲み物を補給してくれるカフェが出現するかもしれない。事実、協力を表明してくれているカフェが何店舗かあるらしい。

■空き家・空きスペース活用


■リノベーション

  • ホテルクラスカ
    • 目黒通りでかつて人々に親しまれた古いホテルをリノベートして生まれた、ホテル・ダイニング&カフェ・レンタルスタジオ・ギャラリー&ショップからなる複合施設。
  • スクラップウッド家具
    • オランダのピート・ヘイン・イーク。彼が手がけるスクラップウッド家具は、最近日本でも注目され始めている。彼は、建築の解体現場や粗大ゴミ置き場で拾ってきたスクラップウッドを切り刻んで、それらを再構成することによって家具を作り上げる。
  • バナー広告の帽子
    • スペインのリリアナ・アンドラデとマルセラ・マンリケの2人は、バルセロナ市の街頭に設置されるバナー広告を活用してバッグや帽子をデザインしている。バルセロナのバナー広告は一流のデザイナーが手がけることで有名だ。しかし、それらバナーは広告期間を過ぎると廃棄されてしまう。そこで、リリアナとマルセラは廃棄されたバナーをバルセロナ市から貰い受けてバッグを製作し始めたという。

■農業

  • 地下農場 「PASONA O2
    • 都会の人たちに農業を身近に感じ、 興味をもってもらう施設として、東京 ・ 大手町の銀行地下金庫跡に開設(2005年~2009年)。
    • 太陽光のまったく届かない地下で、水田や 80 種類 の野菜・植物を栽培。新しい可能性を体感できる施設として注目を集めた。

■フィールドワーク

  • キョート*ダンメンロシュツ
    • 男が背中で人生を語るように、町屋はダンメンで自らを語る。キョート*ダンメンロシュツはそんなものたちのフィールドワークである。


  • ちょうちょぼっこ
    • 「ちょうちょぼっこ」は週末のみの営業。4人の若い女性が趣味の活動として交代で店に立つ。貸本は会員制で1週間100円/冊。喫茶利用の場合は自由に本を閲覧することができる。古本コーナーもあるので、気に入った本が見つかれば購入することもできる。
    • 入会金、貸本代、飲食代、古本代の収入で家賃や光熱費を支払っている。儲けはほとんど無い。原資となる本は4人が気に入って買ったものを持ち寄る。店番は交代制で無償。楽しそうに運営している姿が印象的だった。
  • soramimibunco
    • 同じく週末だけ営業する古本屋が中崎町にある。「soramimibunco」という古本屋。60-70年代の建築やデザインの書籍を中心に扱う古本屋で、若い男女が2人で運営している。

■シェア

  • シェア金沢
    • サービス付き高齢者住宅と障害者施設、学生住宅、ショップや立ち寄り温泉。
    • 食事と温泉がキーワード。

■住み替え

  • 「人口減少社会の郊外住宅地における住み換え支援」と題して、ニュータウンなどで最近始まった住み換え支援事業について考える。高度経済成長期に開発されたニュータウンには、現在多くの高齢者が居住している。そうした高齢者の多くは、2人住まいにも関わらず4LDKという広い間取りの住宅に住んでいたり、4階にも関わらずエレベーターがついていない団地に住んでいたりする。一方、都市部に居住する子育て世代の若い夫婦は、ニュータウンの広い家に住みたいと考えているにも関わらず、部屋が空かないためになかなか希望する住宅を見つけられない。生活に不安を抱えている高齢者が安心して住居を住み換えられるようにすることができれば、空いた部屋を利用してニュータウンに若い世帯を呼び込むことが可能になる。

■駐車場

  • 空撮
    • 空港に近ければ有効?空からみると企業の広告になる空港併設駐車場。
  • パークレット
    • 駐車場が増えているのなら、その駐車場をデザインしてしまえばいい。ただし、駐車場本体にデザインを施すのではない。駐車場に停まるクルマの色を揃えることで風景を作ろう、というのが槻橋さんのプロジェクト「パークレット」である。

■道路


■高架下

  • AKI-OKA
    • 秋葉原~御徒町駅間を“歩きたくなる高架下”として、多くの皆さまにご利用いただけることを目的に名付けた愛称で、2010年に開業した「2k540 AKI-OKA ARTISAN」を皮切りに、「ちゃばらAKI-OKA MARCHE」「御徒町らーめん横丁AKI-OKA GOURMET」などテーマを設けた開発がすすめられている。

■移動距離

  • AMAワゴン
    • 海士町からマイクロバスを出して上京し、日本各地の若者を拾いながら海士町まで戻ってくる。拾われた学生たちは海士町の中学校で出前授業を行い、都市部の大学生と島の中学生との交流を促進する。東京の一橋大学の学生たちが考え出した仕組み。

■暮らしの足

  • 坪沼乗合タクシー
    • 公共交通空白地区で、地域の人たちが自治としてやっている。

■公園

  • 設備
    • ベンチ
      • メモリアルベンチ。災害の記憶をベンチに刻んでおくことで、危機意識を向上。
      • かまどベンチ。普通のベンチが、災害時にはかまどになる
      • 収納ベンチ。普通のベンチが、災害時には収納になる。
      • トイレベンチ・マンホールトイレ。普通のベンチがふたを反転させるとトイレに。マンホールを外すと下水道の通ったトイレに。
      • 防災シェルター。一見普通のベンチが、災害時にはテントに早変わり。
    • ソーラー設備
      • 照明・車止め。配線いらずのソーラー照明。災害時の非常用電源にも早変わり。
      • マップ。日中の太陽光で夜間のマップ照明を行う。
    • 防災遊具
      • デッキ下にテントを収納し、災害時には布をかけるだけでテントに早変わり。
  • 園路のデザイン
    • 脱走経路にして楽しむ!
      • ミズーリ州の公園のプロジェクトでは、一般的な園路線形を囚人の脱走ルートに改変した。何気なく歩いていた公園のルートが、ある箇所から急に脱走ルートの線形に変わる。元の園路に戻るまで右往左往したルートは、最後に囚人が捕まった場所で行き止まりになる。
      • 公園内に設置された脱走ルートは3種類。いずれも有名な脱走劇で、「テキサス-7」と「アルカトラズ-62」と「イースタンステイトトンネル」のルートである。州から州へと渡った脱走劇のルートなので、その縮尺は大きく縮められてミズーリ州の公園内に収められている。何の意味も持たなかった園路に意味を付与し、人の流れを改変し、別の場所の歴史を体感させるプロジェクトとしては、面白い試み
  • 私有地の公園化
    • イギリスには、有名な「フットパスシステム」がある。広い農場や牧場、あるいは庭園などの外周をめぐる柵の一部に扉が付いていて、誰でもいつでも私有地を通り抜けることができる。他人の庭を通り抜けて散歩することができるというシクミを作り出したイギリスという国はすばらしいと思う。
    • スウェーデンには、自然享有権という権利があって、これが法律で守られているという。自然享有権(アッレマンスレット)というスウェーデン語は、スウェーデン人が生まれながらにして自然を楽しむ権利を持っているという意味を含むそうだ。この精神に則って、スウェーデンでも他人の庭園や農園を通り抜けることができるのだという。
    • 自分の土地でなくてもオープンスペースを楽しむことができるというのは、現代の日本人にはほとんど無い発想だといえよう。日本でも最近オープンガーデンが一般的になってきたものの、さらに進めて庭園を誰でもいつでも横切ることができるというところまで行き着いてほしい。そうすれば、オープンスペースのマネジメントやデザインもこれまでのものとは違ってくるはずだ。
  • ブライアント・パーク
    • この公園の運営の特徴は、BID(Business Improvement District)としての活動が中心にあること。BIDとは「民間が行うエリアマネジメント活動の資金を自治体が再配分し、公共空間の管理も一体的に任せて街づくりを推進する制度のこと」。
    • 公園の活性化に大切な10の要素

■風景づくり

  • 【稜線との共存】
    • 「アリア・ディ・フィレンツェ」というファッション工業団地。貴金属や革製品の会社10社の工場が並ぶ街である。奥の方には結婚式場と教会もある。設計はすべて北河原温さん。
    • およそ僕がイメージする工場団地からは程遠い、整った街並みである。周囲を囲む山の形をうまく読み取って、その前面に建つ建築物の形態へしっかりと反映させている。単調になりがちな街並みも、バラエティーに富んだ工場の形態によって画一化を免れている。2つの工場が1つの庭を共有しているケースも見られる。少しバブリーな様相は時代のせいだとすれば、1人の設計者が部分から全体までを設計したことが功を奏した事例だといえるだろう。

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